史料翻訳活動

中世ヴァルド派関連史料の校訂と日本語翻訳を進めています。



◆『選民の書』Liber electorum(1335-1350年ごろ)

pdf Liber Electorum (Ms.Dd.XV.29, Cambridge, ff.236-240) (0.61MB)

 中世ヴァルド派の歴史書の1つ。著者不明。執筆言語はラテン語および古オック語。1335年から1350年の間にラテン語版が作成され、後に一般信者向けに古オック語版も作成された。10篇のラテン語写本と、1篇のオック語写本が現存している。『コンスタンティヌスの寄進状』により、ローマ教会は教皇シルウェステル1世以降に堕落したが、教会から分離した一部の信者が純粋な福音を保持しており、その姿勢はペトルス Petrus またはワルディス Waldis と呼ばれる人物に受け継がれているという。





◆『崇高なる読誦』La Nobla Leiçon, La Nobla Leyczon, La Nobla Leyçon(15世紀初頭)

pdf 【翻訳】中世ヴァルド派詩編『崇高なる読誦』 (0.47MB)
(Cf.『立命館言語文化研究』, 立命館大学国際言語文化研究所, 31巻, 1号, pp.251-270, 2019年)

pdf 【翻訳】中世ヴァルド派詩編『崇高なる読誦』解説なし・対訳のみ (1.11MB)

 中世ヴァルド派詩編に含まれる作品の1つ。著者不明、執筆言語は古オック語(ピエモンテ谷の方言)。Cambridge (B) 写本、Cambridge (C) 写本、Genève写本、Dublin写本と、計4篇の写本が現存している。総行数や文章の形式は写本ごとに異なっており、全部で479行から492行ほどが韻文または散文で書かれていて、ヴァルド派説教師にとっての教理書としての性格を備えているという点が当該文書の持つ特徴である。その内容は、大きく6つのパートに分けられている:①終末の接近と最後の審判に臨む姿勢について(1-138行)、②モーセの登場と古い契約について(139-207行)、③イエスの誕生と新しい契約について(208-266行)、④イエスの死と復活について(267-330行)、⑤堕落したキリスト者たちについて(331-438行)、⑥神が与えた3つの掟について(439-481行)。なお、ここで紹介している翻訳は、Cambridge (B) 写本の La Nobla Leiçon (Ms.Dd.XV.30, Cambridge, ff.96b-107b) を底本としている。


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◆『舟』La Barca(15世紀初頭)

pdf 【翻訳】中世ヴァルド派詩編『舟』 (0.5MB)
(Cf.『立命館言語文化研究』, 立命館大学国際言語文化研究所, 34巻, 1号, pp.175-195, 2022年)

中世ヴァルド派詩編に含まれる作品の1つ。著者不明、執筆言語は古オック語(ピエモンテ谷の方言)。Cambridge (B) 写本、Genève写本、Dublin写本と、計3篇の写本が現存している。総行数は写本ごとに異なっており、全部で331行から337行ほどが6行で1連を構成する韻文で書かれている。『舟』は、全体を通して、大きく2つのパートに分けることができる。第1部(1-162行)は「現世に生まれ落ちた人間が抱える原罪と,その救い」について書かれており、その内容は、後に教皇インノケンティウス3世(在位1198-1216年)となる枢機卿ロタリオ・ディ・セニ Lotario di Segni(1160 頃-1216年)が1194-1195年頃に著した『現世の蔑視,あるいは人間の悲惨な境遇について』De Contemptu mundi, sive de miseria humanae conditionis libri tres の内容と酷似している。第2部(163-337行)は、①死の接近(175-210行)、②死後の行き先(211-276行)、③悔悛の奨励(277-337行)について書かれており、人間を「舟」に、現世を「海」にたとえて、地上世界という海を航海していく(=人が生きていく)中で各々が舟に載せた「積み荷」によって、死後の行き先が決まると説く。

 

 


※ 本ページで使用している画像は、管理人自身が撮影・入手した写真およびヴァルド派文化センターからご提供いただいたものを使用しております(それ以外の画像は引用元を付記しています)



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